ゴミ屋敷からの退去において、最も現実的で深刻な問題が、その莫大な「退去費用」です。多くの人が「敷金が戻ってこないくらいだろう」と安易に考えてしまいがちですが、その認識は致命的に甘いと言わざるを得ません。ゴミ屋敷の原状回復費用は、私たちの想像を遥かに超える金額になることがほとんどです。その高額な請求の内訳は、主に「ゴミ撤去費用」「特殊清掃費用」「リフォーム・修繕費用」の三つで構成されます。まず、「ゴミ撤去費用」。これは、部屋に溜まった大量のゴミを分別し、運び出し、適正に処分するための費用です。専門の清掃業者に依頼した場合、部屋の広さやゴミの量によって料金は変動しますが、ワンルームでも10万円から30万円以上かかるのが一般的です。トラックのサイズや作業員の人数によって料金が決まります。次に、「特殊清掃費用」。これは、通常のハウスクリーニングでは対応できない、深刻な汚染を除去するための費用です。長年放置されたゴミから発生した強烈な悪臭を除去するためのオゾン脱臭作業、ゴキブリやハエなどの害虫を徹底的に駆除する作業、そして床や壁にこびりついた汚れや体液などの汚物を除去する作業などが含まれます。これらの専門的な作業には、5万円から20万円、あるいはそれ以上の費用がかかります。そして、最も高額になりがちなのが「リフォーム・修繕費用」です。ゴミの重みで床が沈んだり、液体が染み込んで腐食したりした場合の床材の張り替え。壁にカビが発生したり、タバコのヤニや臭いが染み付いたりした場合の壁紙の全面張り替え。湿気で傷んだドアや柱の交換など、部屋の状態によっては、ほぼスケルトン状態からのフルリフォームが必要になるケースもあります。この費用は、20万円から50万円、ひどい場合には100万円を超えることも珍しくありません。これらを合計すると、ごく一般的なワンルームのゴミ屋敷であっても、退去費用が総額で50万円から100万円以上に達する可能性は十分にあります。敷金は焼け石に水。この現実から目を背けず、早期に対応することが、損失を最小限に食い止める唯一の方法なのです。
ゴミ屋敷の退去費用はいくらかかる?原状回復費用の内訳