ゴミ屋敷と呼ばれる状態の家に住んでいる人が、なぜ物を捨てられることに激しく怒るのか、その心理は複雑です。一般的に考えれば、ゴミは不要なものであり、捨てることは部屋を綺麗にするために必要な行為です。しかし、ゴミ屋敷の住人にとっては、ゴミは単なる不要物ではなく、特別な意味を持つものになっている場合があります。「もったいない」という気持ちが強い、物に囲まれていると安心する、物を捨てることで過去の記憶や感情を失うことへの恐れ、物を所有することで自己肯定感を保っているなど、様々な理由が考えられます。また、精神的な疾患が背景にある場合もあります。例えば、強迫性障害の一種である「ためこみ症」では、物を捨てることが極度の不安や苦痛を引き起こします。統合失調症やうつ病などの場合も、現実感が薄れ、ゴミとそうでないものの区別がつかなくなることがあります。さらに、認知症の進行によって、物の価値や必要性を判断できなくなることもあります。これらの心理状態や疾患を理解せず、一方的に「ゴミだから捨てろ」と迫ることは、住人の心を深く傷つけ、逆効果になる可能性が高いのです。ゴミ屋敷の住人の物を、本人の許可なく勝手に捨ててしまうことは、法的な問題に発展する可能性があります。たとえ家族であっても、他人の所有物を勝手に処分することは、原則として違法行為とみなされます。民法上では、所有権の侵害にあたり、損害賠償請求の対象となる可能性があります。また、場合によっては、窃盗罪や器物損壊罪などの刑事罰に問われる可能性もあります。さらに、法的な問題だけでなく、人間関係にも深刻な影響を及ぼします。住人の信頼を失い、関係が修復不可能になることもあります。ゴミ屋敷問題を解決するためには、まず、住人との話し合いを重ね、合意を得ることが不可欠です。勝手に物を捨てるという行為は、問題を解決するどころか、より複雑化させてしまう可能性があることを理解しておく必要があります。
ゴミ屋敷の住人が物を捨てると怒る理由