「退去に伴う立ち会い日程のご連絡」そのハガキ一枚が、私が長年見て見ぬふりをしてきた現実を、容赦なく突きつけてきました。当時、私が住んでいたワンルームは、もはや部屋と呼べる状態ではありませんでした。床はコンビニの袋とペットボトルの地層で覆われ、玄関からベッドまで、獣道のようなスペースを四つん這いで進む毎日。退去日が刻一刻と迫る中、どこから手をつけていいのか分からず、ただただ絶望するしかありませんでした。自力で片付けようと、ゴミ袋を数枚買ってきてはみたものの、ゴミを一つ動かすたびに湧き出るゴキブリと、鼻を突く悪臭に、すぐに心が折れました。時間は無情に過ぎていき、管理会社からの電話におびえる日々。精神的に追い詰められ、「もう夜逃げしかないのか」とさえ考えました。そんな時、震える手でインターネットを検索し、藁にもすがる思いで専門の清掃業者に電話をしました。恥ずかしさで声が震える私に、電話口の担当者は「大丈夫ですよ、まずは落ち着いて状況を教えてください」と優しく言ってくれました。その一言に、張り詰めていたものが切れ、涙が溢れました。見積もりに来てくれたスタッフの方は、部屋の惨状を前にしても一切顔色を変えず、淡々と、しかし丁寧に作業内容と料金を説明してくれました。作業当日、三人のプロフェッショナルは、驚くべき速さと効率で、私の数年分の怠惰の塊を運び出していきました。わずか半日で、部屋は私が入居した時と同じ、何もない空間に戻っていました。床が見える。窓から光が入る。当たり前の光景に、ただ涙が止まりませんでした。請求された費用は、私の給料の数ヶ月分に相当する額でした。親に全てを話し、頭を下げてお金を借り、必ず人生をやり直すと誓いました。空っぽになった部屋で、私は物の重さだけでなく、心の重荷からも解放されたのを感じました。あの地獄のような退去は、私の人生のどん底でしたが、同時に、新しい自分に生まれ変わるための、最高のスタート地点でもあったのです。
実録!ゴミ屋敷からの退去、私が経験した地獄と再生の物語