「片付けるお金がないから仕方ない」。そう自分に言い聞かせ、ゴミ屋敷と化した住まいでの生活を続けている人もいるかもしれません。しかし、その先延ばしは、目先の費用を節約するどころか、将来的にはるかに大きな金銭的、そして精神的な代償を支払うことにつながる危険性をはらんでいます。まず、最も深刻なリスクが火災です。ホコリをかぶった紙類や衣類は格好の着火剤となり、コンセント周りのトラッキング現象や、タバコの不始末など、些細な火種が瞬く間に燃え広がり、家全体を焼き尽くす大惨事を引き起こします。そうなれば、自宅を失うだけでなく、近隣に延焼した場合の損害賠償は計り知れません。また、健康被害も深刻な問題です。カビやハウスダストは喘息やアレルギーを悪化させ、繁殖した害虫は感染症を媒介します。医療費という形で、結局はお金がかかってしまうのです。さらに、悪臭や害虫の発生は、近隣住民とのトラブルに発展します。最初は我慢してくれていた隣人も、限界に達すれば苦情や訴訟に繋がりかねません。そうなると、慰謝料の支払いや、最悪の場合は強制的な退去を命じられることもあります。行政による「代執行」が行われるケースもその一つです。これは、本人が片付けない場合に、行政が強制的にゴミを撤去し、その費用を本人に請求する制度です。行政代執行の費用は、一般的な業者に依頼するよりも高額になる傾向があり、結局は多額の借金を背負うことになります。「お金がない」という現状は確かにつらいものです。しかし、問題を放置することで膨らみ続ける将来の負債を考えれば、今、勇気を出して専門機関に相談し、解決に向けて動き出すことこそが、最も賢明で、結果的に最も安価な選択肢となるのです。