2025年10月
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なぜ空き家はゴミ屋敷と化してしまうのか
日本全国で増加の一途をたどる空き家問題。その中でも特に深刻なのが、管理されずにゴミ屋敷と化してしまうケースです。なぜ、かつては人の暮らしがあったはずの家が、見るも無残な姿に成り果ててしまうのでしょうか。その背景には、現代社会が抱える複数の要因が複雑に絡み合っています。最大の要因は、所有者の管理意識の欠如、あるいは管理が物理的に困難な状況です。家を相続したものの、相続人自身が高齢であったり、遠方に住んでいたりすることで、定期的な管理がままならなくなります。最初は些細な庭の雑草だったものが、やがて不法投棄を誘発し、気づいた時にはゴミの山が形成されているのです。また、相続問題がこじれ、複数の相続人間で責任の所在が曖昧になっているケースも少なくありません。誰もが「誰かがやるだろう」と問題を先送りするうちに、事態は悪化の一途をたどります。さらに、元々の住人が高齢で、亡くなる前にセルフネグレクトの状態にあり、家が生前からゴミ屋敷化していたという場合も多くあります。残された家財道具と生活ゴミが混然一体となり、遺族が手を付けられないほどの状態になっているのです。ゴミ屋敷と化した空き家は、単に景観を損なうだけではありません。害虫や害獣の発生源となり、悪臭を放ち、放火や倒壊のリスクを高め、地域全体の安全と資産価値を脅かす時限爆弾のような存在となります。この問題は、もはや個人の所有物の問題ではなく、地域社会全体で向き合うべき喫緊の課題なのです。